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2018.10.11更新

個人の住宅売買には税制面でいろいろなサポートがあります。

中でも利用しやすいのが「売却で得た利益の3000万円まで非課税になる制度」と、「新しい住宅を購入した場合の住宅ローンについて一定額の税額控除が受けられる制度」の2つです。 ただし、この2つは基本的に併用がしづらいものです。

制度として併用できなくもないのですが、実際にはリスクも伴います。

※私が監修を行ったマンション売却カレッジさんの記事「3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用は可能か?」でも詳しく解説しています。

3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用は無理といわれる理由

売却益のうち3000万円までは控除されて非課税となる制度を「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」と言います(以下「3000万円特別控除」とします)。

一方、住宅ローンで住宅を購入した場合に、ローンの年末残高の1%を10年間税額控除する制度を住宅借入金等特別控除と言います(以下「住宅ローン控除」といいます)。

原則、上限は40万円(中古住宅の場合は20万円、認定住宅の場合は50万円)です。

税額控除はその金額を納税額から直接に差し引くものですから節税効果も高くなります。

もし、あなたが住み替えを考えている場合は、両方使いたいですよね? しかし、旧居の売却益に3000万円特別控除、新居のローンに住宅ローン控除、というように2つの制度を併用をすることは基本的に出来ません。

なぜなら、住宅ローン控除の適用条件に、「住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間に3000万円特別控除を受けていないこと。」とあるからです。

2つの制度を比較しどちらの制度を利用するべきか比較する

どちらかの制度を選ばなければならない場合、どちらが得かはケースバイケースなので具体的な計算が必要です。

前提として、3000万円特別控除を利用しなければ、旧居の売却益に対して税金が掛かります。

例えば、5年を超えて所有している場合は長期譲渡課税の税率が適用されます。
所得税15%と住民税5%です(正確には2037年まで復興特別所得税が0.315%加わります)。

(※所有期間が5年以下、または10年を超えている住居ぼ税率はまた別です。)

3000万円特別控除を利用した方が得な例

課税対象は、旧居を売却して得た収入そのものではなく、利益部分のみです。

収入から、旧居を購入した費用や不動産会社への仲介手数料などを差し引いた額が課税対象となります。

ですから、4000万円の収入を得ても、もとの購入額や手数料などを引いた額が1000万円であれば、1000万円が課税対象額です。

では、実際の具体例を見ていきましょう。

・旧居の売却で1000万円の売却益。
・2000万円のローンで新居を購入。
・3000万円特別控除を利用せず、住宅ローン控除を選択

まず、1000万円に20%の税率を掛けると、売買益での課税は200万円となります。

住宅ローン控除は年末残高の1%が税額控除されますから、1年目は2000万円の1%つまり20万円が控除されます。

翌年以降も10年目まで税額控除を受けられますが、ローンが返済されて残高が減っていると控除額も少なくなります。

したがって、2年目以降の税額控除は20万円以下となります。

よって、10年間の累計額も200万円以下となるでしょう。

このような場合、住宅ローン控除よりも3000万円特別控除を利用した方が得となります。

なお、住宅ローン控除はその年の納税額以上にはお得になりません。

納税額が15万円の人は、20万円の控除が認められても税がお得になるのは15万円までであることも要注意です。

住宅ローン控除を利用した方が得な例

先ほどとと同じ条件で、旧居の売却による利益だけ500万円だったとします。

この場合、売却益への課税額は100万円。

住宅ローン控除で受けられる控除額は、100万円を超えるでしょう。

住宅ローン控除で10年間どれだけお得になるかは返済ペースやその間にかかる利子なども含め複雑な計算を要します。

仮に年間100万円返済して利子などは考えずに大雑把に計算すると150万円程度となります。

なお、住宅ローンが高額であれば10年間の控除額はもっと大きくなります。

このような場合も3000万円特別控除よりも住宅ローン控除の方が有利となります。

併用が可能となる場合

2つの制度が併用できないのは、住宅ローン控除の適用条件に「その前後2年」は3000万円特別控除が使えないことが原因でした。

裏を返せば「前後2年」以外の年に旧居を売却すれば、3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用は可能だということです。

先に住宅ローン控除を使って新居を購入した場合

2年経過後に旧居を売却すればよいのですが、今度は3000万円特別控除を受けるための期限に気を付ける必要があります。

3000万円特別控除の適用条件に「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」とあるからです。

例えば、2018年に住宅ローン控除を使って新居を購入した場合、2年後の2020年末まで3000万円特別控除は使えず、その後3000万円特別控除を使うには2021年12月31日までに売却しなければなりません。

つまり、売却のチャンスは1年しかないことになります。

先に3000万円特別控除を使って売却した場合

住宅ローン控除を受けるには前後2年に3000万円特別控除を受けていなければよいので、上記の例では2年後の2021年後に新居を購入すれば併用可能となります。

間の2年は賃貸住宅や実家などに住むことになります。

併用のリスク

3000万円特別控除と住宅ローン控除を併用すること自体は出来ますが、リスクもあります。

先に住宅ローン控除を使った場合、売却には1年しかありません。売り急ぐことで安値でしか売れないことがあります。

なかなか売れなければ、売出価格を下げていくしありません。

いよいよ、タイムリミットが近づけば不動産会社に直接買い取って貰う方法もありますが、相場の半額程度になってしまいます。

売却価格が安くなってしまえば、併用による節税金額など一瞬で吹き飛んでしまうのです。

先に3000万円特別控除を使った場合は、しばらく実家や賃貸に住むことになります。

そもそも新居に住み替えをしたかったのに、併用を考えるあまり遠回りになってしまえば意味がありません。

まとめ

3000万円特別控除と住宅ローン控除を併用することも可能ですが、リスクもあります。

そのため、一般に言われるように併用しないという選択も十分合理的なものです。

併用せずにどちらかを選ぶ場合、どちらがお得になるかしっかりとシミュレーションしておきましょう。

投稿者: 近藤会計事務所

TEL:03-3485-3061

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